欧州大手企業CEOらがEUにAI規制法案の一時停止を要求 米中との競争遅れを懸念
公開日:2025年07月03日 16:06
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エアバスやBNPパリバなど欧州を代表する企業の経営陣が、ブリュッセルに対し新人工知能(AI)法の一時停止を要請した。現在の規制案では米国や中国との競争に遅れをとるとの懸念が背景にある。フィナンシャル・タイムズ紙によると、主要企業のCEOらは欧州委員会のフォンデアライエン委員長に対し、AI法の2年間の凍結を求めた。規制内容が重複し不明確な点が多く、投資を萎縮させ欧州全体のAI開発を遅らせかねないと警告している。共同書簡では「複雑すぎる規制枠組みは、欧州のAI野望を危険に晒す。欧州企業の成長を阻害するだけでなく、グローバル競争に必要な規模でのAI導入を全ての産業が阻まれる」と指摘。フランス小売り大手カルフールやオランダの医療技術企業フィリップスなども署名に加わった。米政府や巨大テック企業、欧州市場団体も同法への圧力を強めており、7月2日にはブリュッセルで米主要テック企業幹部を招き、より緩和された修正法案を協議した。議論の焦点は、MetaのLlamaやOpenAIのGPT-4などのAIモデル展開時に企業が遵守すべき「実践規範」。当初5月公表予定だったが延期され、内容も弱められる見込みだ。イェンナ・ヴィルクネンEU技術委員は「8月のAI法正式施行前に実践規範を公表し、企業や中小企業が同法を順守できるよう支援する」と述べた。EU委員会と加盟国当局者は非公開で、法律の段階的施行スケジュール簡素化を協議。AI法は2024年8月に完全施行されるが、主要措置の多くは今年末以降にずれ込む見通し。クーリー法律事務所のパトリック・ヴァン・エーケ共同代表は「産業界が最も求める法的確実性を考慮しない『規制過多』の典型例」と批判した。書簡をとりまとめたのは多業種110社で構成する「欧州AIチャンピオンズ・イニシアチブ」。2年間の凍結は「世界のイノベーターや投資家に対し、欧州が規制簡素化と競争力強化に本気であることを強く示す」と主張。スタートアップ創業者や投資家からも同様の懸念が噴出している。先週別途提出された書簡では、EU内30超のスタートアップ経営陣が同法を「性急に作られた時限爆弾」と警告。汎用AIモデルに関する不明確な規制が各国でバラバラに施行されれば、資金力のある米テック大手が地場中小企業に対して優位に立つと危惧している。既存企業も自社システムで大規模言語モデル(LLM)を使用する全ての企業が、特に著作権責任などの敏感分野で巨大テック企業と同様の規制対象となる可能性に懸念を示す。加盟国が規則をどう適用するか不明確な点が、AIツール導入をためらわせ北米やアジアの競合に対して敗北要因になるとの指摘も。欧州委員会は「AI法の主要目的であるEU全域でのリスクベースの統一規則確立と、欧州市場におけるAIシステムの安全性確保に完全にコミットしている」と強調。現状を考慮しデジタル規則全般の簡素化を進めていると付け加えた。
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