BYD、南北米進出計画を一時凍結 地政学的リスクと労務問題が影響

公開日:2025年07月03日 17:14
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BYDは14日、北米・南米市場への事業拡大計画に関して方針転換を表明した。実施時期は未定とし、具体的な投資規模や優先市場についても言及を避けた。BYDのステラ・リー副社長はブルームバーグの取材に対し「地政学的問題が自動車業界に与える影響は甚大だ。判断にはさらなる状況の明確化が必要」と述べた。特にメキシコでの大規模工場建設計画は、2024年11月の米大統領選終了まで発表を延期。メキシコのシェインバウム大統領によれば、BYDは正式な投資提案さえ行っていない状態だという。

障害の一つがメキシコから米国への自動車輸出に課される25%の関税だ。トランプ政権時代に導入されたこの措置は、国内外メーカーに大きな打撃を与えており、コスト転嫁や一時値引きを余儀なくさせるケースも。業界関係者は「高関税は利益率を圧迫し長期計画を困難にする」と指摘する。これに対し、各社は価格引き下げや輸入追加料金の導入など様々な対策を講じており、ステランティスと日産はメキシコ工場の生産規模縮小に踏み切った。

さらにBYDはブラジルでの労務問題も重荷となっている。2023年12月、現地請負業者が160人以上の労働者に対してパスポート没収・賃金未払いなどの不当労働を強いたと指摘され、工場計画が停滞。BYDは労働者をホテルに移すなど緊急対応を行ったが、リー副社長は「スピード重視の戦略を見直し、現地企業との連携を強化する必要がある」と成長ペースの調整を明言した。

一方、欧州市場では積極展開を継続。BYDは独自の輸送ネットワークを構築し、現地向け小型EVのラインナップを拡充。2025年4月にはテスラを超える販売実績を記録し、株価は38%上昇している。同社は欧州に200億ドル規模の投資を計画しており、「欧州で成功することはあらゆる面での優位性を意味する」(リー副社長)と自信を見せる。

関連記事として、小米(シャオミ)もEVの海外展開を2027年まで延期する方針を発表。雷軍CEOは「SU7セダンと新発売のYU7 SUVの国内需要を優先すべきだ」と説明し、生産能力強化に注力する考えを示した。
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