億万長者支援の新銀行「エレボール」がSVB崩壊後の暗号業界の空白を埋める

軍事技術企業Andurilの創設者パーマー・ラッキーとベンチャーキャピタル8VCのジョー・ローンズデールが支援する新銀行「エレボール」が、シリコンバレー銀行(SVB)崩壊後の米国暗号業界における新たな生命線となる可能性が出てきた。

■SVBが暗号業界に果たした役割
SVBは2023年の経営破綻以前、暗号業界において重要な存在だった。シルバーゲートやシグネチャー銀行のような「暗号専業銀行」ではなかったものの、多くの暗号スタートアップにとって主要なパートナーとして機能。伝統的な金融機関がリスク過大と判断する企業に対し銀行サービスを提供し、初期段階の暗号企業やブロックチェーン基盤プロジェクト、デジタル資産に特化したベンチャーキャピタル基金などと取引していた。特にステーブルコイン発行体のCircleはUSDCの準備金の大部分をSVBに預託しており、SVB破綻時にはUSDCが一時的にドルペッグを失う事態も発生した。

■SVB崩壊後の空白
SVB破綻後、その資産はファーストシトラス銀行に買収されたが、多くのテクノロジー・暗号関係者からは「SVBの機能を完全に代替する存在が現れていない」との声が上がっている。スタートアップ、特にリスクの高い事業体に対する与信アクセスは困難になり、一部の暗号企業はフィンテック企業に転じたものの、安定した銀行パートナーを見つけられないケースも多い。

■新銀行エレボールの戦略
この状況を受け設立されるエレボール銀行は「イノベーション経済」に特化したサービスを展開予定。伝統的銀行と新興フィンテックの両方で「サービスが行き届いていない」と感じる企業・個人を主要顧客と位置付け、特にステーブルコイン取引に関して「最も規制順守的な主体」となることを目指す。運営にはCircleの元アドバイザーやデジタル資産コンプライアンス企業の経営者が参画。オハイオ州コロンバスに本拠を置き、アプリとウェブサイトを通じたデジタル専業銀行としてサービスを展開する。

■暗号業界への影響
現段階でエレボールがSVBの後継となるかは不透明だ。銀行免許の承認手続きが残っており、米国における暗号業界と銀行の関係は依然として緊張状態にある。しかし認可が下り、暗号関連計画が実現すれば、他の銀行が避けるタイプの企業にも門戸を開く重要な新プレイヤーとなる可能性を秘めている。暗号業界の創設者や投資家たちはその動向を注目せざるを得ない状況だ。